日本の中流層が貧しくなっている話をよく聞きます。
本書は、日本における中流の現状をわかりやすくまとめています。
もはや過去の栄光と化してしまった、「一億総中流社会」。
この言葉が示すかつての安定した生活は、現実では多くの日本人から手の届かないものとなっています。
夢をもてず、希望を見出せなくなった若者たち。
彼らは所得よりも働く負担が軽い仕事を選び、できるだけ働かず、投資などで不労取得を目指す。
彼らにとって、「努力すれば報われる」という古き良き時代の価値観は、もはや信じられない幻想となっています。
FIREムーブメントに通じる部分があるのかもしれません。
一方で、企業もまた危機に立たされています。価格競争の激化により利益が減少し、それが給与の減少に繋がっています。
戦後の経済発展を支えた右肩上がりの時代も、企業への依存も、もはや過去の話です。
では、どう出口を見出すべきなのか。
本書では、リスキリングというアプローチも提唱されています。
新しい時代に適応するため、個々のスキルを再定義、再編する。
言うは簡単ですが、実践は難しいことはよくわかります。
まったく畑違いの場所に行って、すぐに何とかなるのかというと、自分の経験からもわかりますが、そんなに甘いものではありません。
やはり、終身雇用制度の見直し、デジタルスキルの強化、非正規雇用の見直しなど、
日本社会の構造を変えていく必要があるのかもしれません。
簡単な処方箋はない気がしますが、現状を確認するのによい一冊です。